「重箱ハウス」スローフードの住宅

I Project

STORY
4人家族の為の都心の専用住宅。
敷地は文教地域で知られる、文京区本駒込3方向が建物に囲まれた長方形の敷地に、地下1階地上4階建てのコンクリートの箱を積層して都心に立体的に住まう「生活空間」を実現したプロジェクト。

住宅に求められた主な機能は、自営業を営むご主人のオフィススペース、 音楽家の奥様の為のレッスンルームと4人家族の快適な生活空間が共存できる「生活の器」の構成を考えることであった。
三つの主要な機能を持つこれらの空間を限られた敷地空間に配置する為には、立体的に各要素を 積み上げて行く事が最良の解答だった。
その中でも我々が考えた敷地に対する最も重要な解決策は、長方形の敷 地から(光と風の通り道)をくり抜いていかに平面計画を成立させるかであった。
法的な規制との関係を考えて、平面的には、(生活の箱)を積み上げる事で、プライベートとパブリックな関係を上下に繋ぐ事が出来た。
言わば用途の異なる箱を積み上げる「重箱システム」で、要求されたボ リュームを限られた敷地内に納める事が可能になった。

これらの箱は、1Fではピアノのレッスンルームであり、地下ではオフィススペースであり、建物を立体的に繋ぐ階段室の箱でもあり、各階での最適な機能がそれぞれ与えられている。
更にこの生活の箱(三つの箱で構 成)はコンクリート化粧合板打ち放し/杉板型枠打ち放し/煉瓦タイルと それぞれのボックスは異なったテクスチャーで仕上られていて、
玄関アプローチは質感豊かな壁面に囲まれた「家の顔」になっている。
周囲を囲まれた今回の様な都市型の敷地を有効的に活用して、光と風が常に感じられる平面計画を実現するための具体的な打開策として、建物の中心に煉瓦とガラススクリーンで囲われた4層吹き抜けの光の坪庭(ライ トコート)を配置した。日々の生活の為の生活動線は常にこの光と風のシ ャフトを感じながらの移動となり、各階で異なる光の入り込みを室内で感じることを可能にした。

全体的な建物のデザインモチーフは、フランクロイドライトの建築に興味を持たれているクライアントの意向もあり、ライト建築特有の「水平」 と「垂直」を強調した。
特に道路側に面した正面のファサードは、縦と横のボーダーラインの幾何学的な構成で、陰影のはっきり表現された存在感のある住宅の顔として計画された。
煉瓦の質感と平滑なコンクリートのラインの対比が美しいシルエットを作り出している。開口部は木製建具の風 合いが住宅のスケール感を更に演出している。
立体的に各階を繋ぐ、敷地 西側に配置した階段室は 5 層幅抜けで、連続したサッシの開口部からの変化ある自然光を内部に引き込み、地下にある2層吹き抜けのオフィススペースまでのアプローチに間接光も同時に提供している。

屋上からは一帯に広がる住宅街の屋根の稜線が眼下に広がり、喧噪とした都心のスケールを感じるが、内部の空間は、白を基調としながら、チェリー材の程良い仕上の組み合わせで、非常に落ち着いた、住宅らしい生活のスケールを演出している。
外部に対しては時代を超越して存在感を表現してくれる素材(煉瓦/コンクリート/木/鋳鉄)を使用し、色褪せても、趣きのある家の顔を保ち続ける意図が込められている。
言い換えれば、この住宅はファースフードの建築では無く、スローフードの建築を目指した住宅である。設計期間に2年、建設に1年、細部に亘って施主と建築家と住宅プロデユーサーが三位一体となって奔走した3年間だった。
改めて、建築家として、家を作る事が何を目指すべきなのかを学んだ貴重な体験を頂いた。家作りは、色々な意味で本当に面白い!
皆さんにもこの体験を是非経験して頂きたい。

A Stacked Box House:assorted Japanese lunch box
A private residence in metropolitan Tokyo
Typical as it is, Tokyo’s central area is one of the most densely populated areas in the industrialized world, so consequently residential lot in Tokyo is very much limited compared to that of the West. In order to incorporate scarcity of land area, architectural concept of this residence was to simply stack up the necessary volumes vertically within the building code limit. Therefore, “Jyubako”, a nest of lacquered box, became the project concept to maximize the building volume: we simple put different house functions in the same way as Japanese arrange assorted side dishes in a lacquered lunch box. This six story-private residence in central Tokyo with variety of spaces including the two-story basement library space is relatively closed to the outside, yet opened up to the inside by a centralized light court which illuminates the space from the top floor to the basement.


DATA
所在地:東京都文京区
竣工:2010年 9月
家族構成:ご夫婦+子供2人
主要用途:専用住宅 
敷地面積:133.60m2・建築面積 80.15m²・延床面積:321.67m2
構造:木造・坪単価:143万円
構造設計:リズムデザイン・施工:赤羽建設 株式会社

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