カマボコ空間

FutsuProject

STORY
始まりは、AlonAlonの代表、那部智史さんのFB投稿でした。

彼は、祝花の蘭を栽培することで障がい者の所得向上を目指すプロジェクトを立ち上げ、エリアを千葉に定めて事業を開催し始めていました。
そんな内容を拝見した時、事業目的の素晴らしさから『私達も関わりたい』と強く想い、直接那部さんへご連絡したことが、きっかけとなりました。
当初、千葉鋸南で進めていましたが、地元の方とのご理解を深めることが出来ず一旦プロジェクトは中断。
5ヶ月後のある日、千葉富津でのプロジェクト再開のご連絡を頂きました。
一旦中断のご連絡をいただいた時はプロジェクト自体がなくなってしまったのではと残念でなりませんでしたが、那部さんの強い想いが、富津とのご縁を結びプロジェクトの再開となりました。

建設地の広さは約400m2、そこに蘭栽培のプラント(ビニールハウス)とB型支援事業所の30m2程度の事務所棟を建設すること。

事務所棟のコンセプトは「かっこ良さ」
『働く人たちが、自慢できる空間(場)を造る』ことを目指しました。

外観はアメリカのガレージでよく使われているガルバドームという鋼板から蒲鉾状の形状を造り、倉庫のようなワイルドなかたちを造りました。蒲鉾状の屋根を塞ぐ両サイドの壁はB型支援事業の女性主任の方をイメージし、えんじ色の外壁としました。

ガルバドームの素材感と形、えんじ色の外観は、事業オーナーの那部さんとB型支援事業の女性主任のイメージを反映し、優しさの中に強さを持たせました。
建築を通し事業オーナー達の「安らぎと自信形成」の想いを、働く人達へ伝える為の建築的な表現となっています。

内部空間は、ガルバドームの形を生かし、事務所スペースや洗面トイレスペースを木造で構成し、ガレージの中にいるような、でも温かさもあり、居心地の良さもあり、ガルバドームと木のコントラストが記憶に残る内部空間となっています。

外構は、事務所棟前に広がるデッキスペースがシンボルツリーを包み込み、休息の場であったり、イベントスペースとなったりと多様な使い方ができるスペースとなっています。

建築計画で一番悩むのは、建物の配置です。
このプロジェクトも、プラント、事務所棟と既存樹木との関係をどのようにするのか、とても悩みました。特に事務所棟と既存樹木との関係については、時間をかけて検討しました。
一度は既存樹木の伐採も考えましたが、打ち合わせを重ねる度に既存樹木を残すことがAlonAlonの目的に必要なことではないかとの結果になり、現在の配置の計画となりました。この選択は正しく、今ではこの樹木がAlonAlonのシンボルとなり、働く人々、訪れる方々、全ての人々を温かく迎えてくれる、なくてはならない存在となりました。

この事業に関わることで、障がい者の方々への偏見はなくなり、逆に沢山のことに気づくきっかけを頂いたことに大変感謝しております。
これからの社会、障がいの有無、国籍、目の色、肌の色、ジェンダー、全ての違いを乗越えて、一人ひとりが幸せになる為に何ができるのか、を真剣に考える時に来ているのだと実感しています。
その為の環境づくり、『場』を造ること。
それが私たち建築家の使命だと考えます。

最後に、施工会社の三宝建築の三堀さん、ガルバドームを輸入建築した神山工業の神山さん、そして弊社と、那部さんの強い想いのもと、強力な結束から建築チーム「Team AlonAlon」が結成されました。
そして、この「Team AlonAlon」ひとりひとりが、「何が出来るのか」を真剣に考え、提案、承認し完成したプロジェクトでした。
降りかかる問題に真摯に対応してくださった施工会社の方々には感謝しかありません。
いつかまた、「Team AlonAlon」で『場』を造る機会をいただけることを楽しみに待っています。


DATA
所在地:千葉県富津
竣工:2017年 10月
主要用途:福祉事業 事務所
敷地面積:417.10m2・建築面積 37.19m²・延床面積:31.47m2
構造:木造・坪単価:115万円
施工:有限会社 三宝建築・有限会社 神山工業所

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