余白による長屋の連続性

DOUBLE BOX

STORY

浜松近郊に建つ二世帯住宅。
世代の違う親子二組の夫婦がお互いの生活範囲を保ちながら、限られ敷地の中でそれぞれに自由な時間を共有する可能性を考えたプロジェクト。

建物の上下の関係だけで二つの世代を区別する事を避けて、ほぼ正方形の敷地の中心に、全く同じ大きさの直方体の箱を間隔を置いて二つ並べた。
並置された箱の内部で起こりうる事と二つの箱が外部に起こす事との関係性に興味を引かれた。
言い換えれば、この住宅が、一個建ての独立性と長屋の共同性を同一敷地内で同時に共有している点である。
独立した二つの生活の場(家)が中央に設置された余白によって繋がりを持つ長屋の連続性を彷彿させ二つの独立した壁を持つ、一つの家となる。

それぞれの箱を自分達のテリトリー(領域)と考えれば、間に設けられたテラスと水廻りのスペースは、中立の共有地帯となる。
価値観や生活スペースの違う二つの家族が同じ場を維持するためには、逃げ込める場所と、向き合う場所の程良い拮抗性が不可欠の様に思われる。

二つの箱の関係性は、このプロジェクトの外部空間と隣地の住宅との関わり方とも共通している。
隣地に直面する東西の壁は、高さ6mx長さ9.6mの木製カーテンウォールで構成され、
外部に面する網入りガラスと室内側のポリカーボネートでサンドイッチされた半透明の目隠しが外部と内部の領域のスクリーンになる。
外部の出来事はガラスのフィルターでろ過されたその気配のみを感じ取り、
内部の出来事はスクリーンに包まれ生活の光と映り込む影に凝縮され外部に間接的に投影される。
それはまるで、夕暮れ時に淡く光る街の明かりの様に。

二つの箱と接する隣地の家は間に設けた犬走りのスペースが、長屋的な余白の場を作り出し、建築表現の異なる異質さを同化してくれる。
不連続の連続性と言っても良いのかもしれない。
そんな家と家の余白に今は聞くことの出来なくなった生活の臭いと世間話しの噂を聞くのかもしれない。


DATA
所在地 静岡県磐田郡 竣工 2001年 9月
家族構成 老夫婦+夫婦+子供1人
主要用途 二世帯住宅
敷地面積 215.80m²・建築面積 96.00m²・延床面積 153.08m²
構造 木造2階建・坪単価 58万円 (外構費除く)
構造設計 structured environment・施工 (株)岡田工務店

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