STORY
東北の水田風景が眼下に広がる、リサイクル企業の作業ヤードの敷地内 に計画された鉄骨造4階建ての本社ビル。
1-3 階は、オフィス機能、4 階はオーナーの為のペントハウス。
外周に柱を配置し、構造体に縛られない、オープンな内部空間を実現。作業ヤードの騒音を感じず、快適なオフィス空間を作る方法が問われたプロジェクト。今後の用途変更にも 柔軟に対応出来る可変性の高い内部プラニングが特徴。
寒冷地特有の熱環境に対応する、気密性を考慮した、外壁デザイン。
外部の熱伝導を避けて、フレームレスの外壁面をデザインする事が課題となった。新素材の構造用接着シール材の使用によって全ての金属支持部材が、建物内部で処理されている。カーテンウオールのマリオンは、一切外部に触れる事なく処理され、地震時の衝撃吸収の機能を持ち合わせた、耐震性にも優れたデザインとなっている。
シンプルな長方形の箱形の外観と室内に光が沢山入る事を念頭にデザインを検討。
外壁の素材は、熱線吸収ペアガラスと耐候性の金属パネルの組合せで構成されている。
直方体のボリュームは、ガラスパネルと金属パネルを、水平方向を強調しながら、交互に重ねて包み込み、最大限に
室内に自然光を取り込んでいる。柱と梁の構造メンバーもあえて隠す事無く、建築仕上の一部として、ガラスパネル越しに見え隠れし、構造体の成立ちを含めたシルエットが立面を構成する。
主体構造は鉄骨造とし、内部空間の自由度を最優先とし、外周面の各面に柱が2本づつ、計八本の柱のみで、成立する構造となっている。構造のフレームに自由度が与えられ、内部のプラニングを優先しながら、柱の位置を決定する事が出来た。
主要な柱と梁は、内部空間の邪魔にならない、奥行きの浅い D=200-250 程度の H 型鋼を採用している。梁幅 /柱幅は逆に、W=900-1000 の断面形状にし、強度を確保している。 床レベルで回る、梁は各面で同じ幅の柱と一体となって自由な内部空間 を構築している。
4階ペントハウスは、可能な限り外部との接点を多く取る事を念頭に計画されている。
平面の形状は、下のオフィス階と変わらないが、複数のテラススペースを各居室に面して配置し、住宅としての独立した空間構成に配慮している。合計3つのオープンテラスは、エントランス/リビング/寝室とそれぞれ密接な関係で配置され、最上階で有りながら個建ての住宅と同じ独立した居住空間を形成している。
生活者の視線が、切れる事無く、連続しており、実際の大きさよりも、奥行き感を感じられる、開放的な空間構成となっている。
シンプルな外観ではあるが、田園地帯に存在感のあるシルエットを映し出している。
ガラスに映り込み変化する周囲の景色は季節の変化を的確に表現している。
夕暮れには、日中の表情とは別に、室内からこぼれる光が、行灯の様な、多彩な明かりを周辺に放ち、
この建物は、さながらこの地域のランドマークの役割を果たしている。
DATA
所在地:岩手県一関市
竣工:2007年 9月
主要用途:事務所兼住宅
敷地面積:9796.50m2・建築面積 326.68m²・延床面積:1129.06m2
構造:S造・坪単価:120万円
構造設計:空間工学研究所・施工:株式会社太田組