広がり(予感)の演出

S Project

STORY
JR 大塚駅徒歩 10 分、商店街を抜け、通りひとつ中に入った路 地に面した 3 階建 S 造の改装プロジェクト。
1階 2階は賃貸ア パート、3階はペントハウスとしてご夫妻の居住空間に全面リフォーム。
建物本体と 3 階スペース内装は比較的新しいが、クライアントの今のライフスタイルには合わず改装に踏み切ることになった。
リフォーム前の間取りは、細かく部屋を区切った 広がりを感じられない窮屈な間取りであった。

常にリフォームの計画において共通した課題とし上げらる点は、
・限られた空間の中で如何に広がり(予感)を演出できるか
・窓の位置の変更が難しい為、どのように光を空間全体に回り込ませるか
・生活動線の簡素化、収納スペースの確保
と、このプロジェクトにおいても、同じ課題が上げられた。

課題の解決策とし、既存の3階の部分を可能な限り、オープンで一体的な生活の場として開放できる方法を考える事から、プロジェクトが始まった。
最終的に落ち着いたのは、三つのガラスの箱を、フロアーに点在させる事だった。
既存の平面の形に、箱を必要に応じて配置し、箱と箱の間には、生活の空間が生まれ、閉じたり/開いたりする事により、実際よりも、更に奥行きを感じられる生活空間が出来上がった。

三つのガラスの箱はトイレ・キッチン・洗面浴室の水回りをた だ単純に外壁へ寄せるだけでなく、室内側に点在させることで、広がり・光・動線を同時に解決する手立てとなる。
生活機能を内包した箱は、その周辺に出来る余白の空間を住ま い手に開放してくれる玉手箱である。
ガラスの素材は、多様な可能性を秘め 透明、半透明、不透明の表情の違いがあり、半透明でもどの程度の半透明さをを表現するかは、フィルムの仕様により繊細な壁面仕上の表現が可能となる。
ガラスも平板だけでなく、溝型ガラス + 平板ガラス、溝型ガラス + 複合板、木壁 + 平板ガラス、構成要素を複数にすることで様々なインテリアのテクスチャー表現が可能となった。
ガラスの壁を住宅規模でこれだけ仕様した例は殆ど無いと思われる。
ガラスは扱いにくく危険な素材等と一般的に思われがちだが、透過性、壁厚、音、熱、などの問題点の解決方法の手がかりとして、
外部のみならず内部使用の可能性を多く秘めている素材である事をこのプロジェクトを通じてその思いを強くした。
同時に、このガラスの提案を快く受け入れて頂いた、クライアントの前向きな姿勢があった上でのプロジェクトだった事を痛感する。

そして、音響システムや収納について、クライアントとの十分なヒアリングと協力のもと、
本来あるべきクライアントと建築家の関係(お任せでは無く参加協力)を保つ事が出来たプロジェクトと言える。


DATA
所在地:東京都豊島区
竣工:2008年 1月
家族構成:ご夫婦
主要用途:専用住宅 
延床面積:102.67m2
坪単価:120万円
施工:株式会社ジーク

実績紹介に戻る