STORY
浜松市にある築30年を越すホテルの外壁リニューアルプロジェクト。
敷地は東名高速道路の浜松インターからほど近いホテル。
現存する外壁のデザインは10数年前に、竣工当時のコンクリートの既存建物に増築されたままで、
かなり老朽化が進み、ホテルの外観は時代に取り残されたままのデザインで放置されていた。
クライアントの依頼は、古くなってしまった外観のデザインを一新し、清潔感があり、若い年代層に受け入れられるエッセンスを外観全体に表現する事であった。
予算、工期等の現実的な問題を解決して行く中で、デザインの解決策として考えたのは、既存の装飾には一切手を付けず、外観全体を新しい仕上材で包み込んでしまう事をデザインの核とする事だった。
当初は、溝型ガラスで光を通しながら、視線を遮る半透明のガラスのボックスを考えたが、最終的には予算上安価で施工性が良い、ガルバニューム鋼板を採用した。
外周を回る壁面は3メートル毎にユニット化され、5種類の違ったパネルパターン(幅3.0 x高さ5.5m)の組み合わせによって、微妙に変化する壁面のパターンを作り出している。パネルは折幅最大600から最小150まで不定形の形で構成され、各パネルは100−200前後のスリット(隙間)を設けて設置され壁面を構成している。
新設の外壁材の支持鉄骨をコンクリート駆体にアンカーで固定し、ユニット化されたガルバニューム鋼板を三点支持で鉄骨に取付けて行く、工法で施工され、工期の短縮化に繋がった。
外壁を単純に面として隙間無くカバーして、既存の外観を完璧に隠してしまうのでは無く
新しく作られる外壁面にランダムにスリット上の細い目地を設ける事で、既存のボリュームを新しく設置された壁面を通して背景として感じる事ができる。
前にあったものを意識しながら、新しい事を感じる。
新しい外壁面の背景として既存の壁面を活用し、積極的にリニューア壁面との関係性を考えた。
既存が完全に見えなくなるのでは無く、バックグランド(背景)として気配を感じられる曖昧さを表現する事が実現できた。
昼と夜では、全く違った表情を見せる事もこのデザインの特徴である。
外壁に白い色を選択したのも、昼間は清潔感のあるモノトーンの外観を主張する事が出来き、
夜は、ネオンサインが白の外壁パネルに艶やかに反射する
対比を楽しむ事が可能である。
このプロジェクトで実現できた事は、言い換えてみれば、
「包み込む」事で、古いものと新しいのもの関係性に、
新しい解釈(共存)を持ち込んでくれた事になる。
after
before
DATA
所在地:静岡県浜松市
竣工:2010年 9月
主要用途:HOTEL
敷地面積:1862.00m2・建築面積 893.65m²・延床面積:737.06m2
構造:S造・工事費:2150万円
構造設計:株式会社KAP・施工:株式会社キーストン